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平成20年法律改正(平成20年法律第16号)解説書について

 特許庁HPに「平成20年法律改正(平成20年法律第16号)解説書」が掲載されました。改正の概要は以下のとおりです。


第1章 通常実施権等登録制度の見直し

 近年の知的財産権を取り巻く産業界の実態を踏まえ、企業等におけるライセンス活動の活発化及びライセンシー保護に対するニーズを受けて、特許出願段階におけるライセンスに係る特許法上の権利として、新たに仮専用実施権及び仮通常実施権を設け、併せてその登録制度を設けることとした。
 また、通常実施権等の登録制度について、特許原簿への登録を通じて一般に開示されている登録事項のうち、企業等において秘匿ニーズの強い事項については、一般への開示を制限する制度を導入することとした。

第2章 不服審判請求期間の拡大

 特許制度において、拒絶査定を受けた出願人に対する手続保障の充実及び適正な補正等の対応を伴った審判請求を行うことによる権利取得の促進の観点から、拒絶査定を受けた後に拒絶査定不服審判を請求することが可能な期間を拒絶査定の謄本の送達の日から3月以内に拡大するとともに、当該審判請求に伴う明細書等の補正を当該審判請求と同時に行う場合にのみ可能とする。
 また、意匠及び商標制度においても、拒絶査定不服審判請求期間及び補正却下決定不服審判請求期間を、拒絶査定又は補正却下決定の謄本の送達の日から3月以内に拡大する。

第3章 優先権書類の電子的交換の対象国の拡大

 出願人の利便性向上及び行政処理の効率化の観点から、新たな優先権書類の電子的交換に対応することを可能にするため、特許法第43条第5項を改正し、第一国において電子化された優先権書類データだけでなく、第一国以外の国や国際機関において電子化された優先権書類データの取得も可能とした(特許法第43条第5項)。

第4章 特許関係料金・商標関係料金の引下げ

 中長期的な収支見込みや利用者のニーズへ適切に対応するため、特許部門及び商標部門の料金を引き下げることとした。

(1)特許部門の料金の引下げ
 特許部門については、特許権の適切な維持を促進する観点から、中小企業からの引き下げニーズが強い特許料を引き下げることとした。その際、10年目以降の特許料を重点的に引き下げることとした。

(2)商標部門の料金の引下げ
 商標部門については、他国と比して高額な設定登録料及び更新登録料を引き下げることとした。引下げに際し、更新登録料を重点的に引き下げることとした。

 また、設定登録料及び更新登録料の分割納付額についても重点的な引き下げを行うこととした。

第5章 料金納付の口座振替制度の導入

 特許料等及び手数料の特許等関係料金について、出願人等手続者からの申出により、口座振替による納付を可能とするため、特例法に口座振替による納付に係る規定を新設した(特例法第15条の2)。また、手続者本人から委任を受けた代理人による手続についても口座振替による納付を可能とするため、必要な読み替え規定を定めた(同法第16条)。

 なお、今般導入を行う口座振替納付制度は、以下の方法により行うことを予定している。

(1)三者間契約に基づく事前手続(事前の届出)
 特許庁長官、手続者及び金融機関の三者間において、あらかじめ、「特許料等又は手数料の納付に際し、手続者から口座振替により納付する旨の申出があった場合には、当該申出に基づき、特許庁長官は金融機関に口座振替に係る情報を送信し、金融機関は手続者に代わり特許料等又は手数料の納付をする」旨を合意(契約)する。

(2)申出に基づく口座振替による納付
 納付を伴う特許出願等の手続に際して、出願人等が前述の合意に基づく口座振替による納付の申出をしたときは、特許庁は金融機関に対しオンラインリアルタイム処理により口座振替に係る情報を送信し、これにより金融機関は手続者の口座から国庫金口座に納付すべき額を振替える。

第6章 その他(信託法改正に伴う改正)

(1)信託の登録について
 登記・登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗できない財産については、信託の登記・登録をしなければ当該財産が信託財産であることを第三者に対抗することはできないこととされているが(信託法第14条)、この「信託の登録」とは、特許権が信託財産に属すること並びに信託の目的及び内容等を公示するものであり、特許信託原簿に登録がなされる(特許登録令第6節)。他方、特許法第27条に規定する特許原簿への登録事項は、特許権の変動等に係る登録事項である。

(2)自己信託等による権利の変動
 従来の信託は、委託者から受託者へと権利者が変わるため、そのような信託に係る権利変動としては、「移転」として整理されるが、自己信託等は、権利は移転せず、同一人格内に止まったままであるため、そのような場合における権利変動を明確化する必要がある。

(3)具体的改正内容
 自己信託等に伴う権利の変動の登録について、他の登記・登録制度に倣って、「権利の変更」を特許法第27条に位置付けるとともに、他の特許権の実体的変動と同様に、その登録が効力発生要件であることを明確化した(特許法第27条第1項、第98条第1項、実用新案法49条及び意匠法第61条)。

詳細は、特許庁HPをご参照ください。


弁理士 竹中謙史

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