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【米国】米国における情報提供

 日本では、出願公開された特許出願の中に自社事業の邪魔になり得るものがあった場合には、その特許出願の特許化を阻むべく、その特許出願で出願された発明の特許性を否定する根拠となり得る先行文献等の情報を特許庁に提示して審査官に参考にしてもらう情報提供制度があります。
 当法人には、「米国にも同様の情報提供制度があるのでしょうか。」というご相談が最近頻繁に入っておりますので、ここでは、米国における情報提供制度について、簡単に紹介したいと思います。

【1】
 現在、米国には、日本の情報提供制度とは手続的に異なるものではありますが、米国特許として成立する前の段階で出願発明の特許性を否定する根拠となりうる先行文献を米国特許商標庁(USPTO)に情報提供する方法として制度上用意されたものとして、2つの方法があります。[方法1]Protest(37CFR1.291)と、[方法2]Third-party submission in published application(37CFR1.99)と、の2つです。

★1:上記[方法1]の特徴は次の通りです。
 ・米国特許弁護士を代理人としつつ匿名で行うことができます。
 ・(i)公知資料のリスト、(ii)公知文献の写し、(iii)外国語公知資料を提出する場合はその英訳、に加え、(iv)提出する公知資料が出願発明の特許性に与える影響に関する簡単な説明、を提出することが必要です。
 ・米国審査官(USPTO)および出願人への送付が必要です。
 ・情報提供の対象となる米国特許出願の出願公開前の手続が必要です。

★2:上記[方法2]の特徴は次の通りです。
 ・米国特許弁護士を代理人としつつ匿名で行うことができます。
 ・(i)公知資料のリスト、(ii)公知文献の写し、(iii)外国語公知資料を提出する場合はその英訳、を提出することが必要です。上記[方法1]とは異なり、(iv)提出する公知資料が出願発明の特許性に与える影響に関する簡単な説明、については提出できません。また、上記[方法1]とは異なり、上限10個の公知文献しか提出できないという制約があります。
 ・米国審査官(USPTO)および出願人への送付が必要です。
 ・情報提供の対象となる米国特許出願の出願公開後2ヶ月経過前の手続が必要です。


【2】
 上記[方法1]については、上述のように出願公開前の手続が必要であることから、出願公開前に情報提供対象の米国特許出願の存在を確認できるという特殊状況がない限り活用できる場面はありません。このため、上記[方法1]については、米国での活用事例数もあまり多くはありません。


【3】
 上記[方法2]については、2ヶ月という手続期限がある方法であるものの、出願公開により情報提供対象となる米国特許出願の存在を確認できた後に取れる手続です。ですので、米国における活用事例も普通にある手続です。普通にある手続であるため、手続費用も通常のIDS手続と同程度となることが多い手続です。


【4】
 上記[方法1][方法2]いずれであっても、通常、審査官に提出された公知資料等は当然包袋には入ります。しかし、情報提供の際に提出した公知資料を検討する明確な義務が米国審査官に発生しないという状況になります。但し、上記[方法1][方法2]いずれでも出願人に対する送付も要求しています。これにより、当該公知資料が出願発明の特許性に影響を与える可能性があると出願人が認識すれば、出願人としては当該公知資料をIDS資料として審査官に提出しなければならなくなるという状況が生まれます。IDS違反が特許付与後に発覚すれば、当該特許の権利行使ができなくなるというペナルティがあるからです。そして、出願人が当該公知資料を審査係属中にIDS資料として提出すれば、審査官に当該公知資料を検討する義務が課せられることになります。


【5】
 実は、実務上、上記[方法2]の2ヶ月の手続期限経過後に行える方法[方法3]があります。この[方法3]は、情報提供対象の米国特許出願の出願人(通常は、代理している米国特許弁護士)にのみ、公知資料を送りつけてしまう方法です。この場合の公知資料送付も米国特許弁護士を代理人としつつ匿名で行うことができます。
この場合も、当該公知資料が出願発明の特許性に影響を与える可能性があると出願人が認識すれば、出願人としては当該公知資料をIDS資料として審査官に提出するという状況が生まれることになります。IDS手続がされるか否かについては出願人次第ということにはなりますが、米国実務上厳しい義務として存在しているIDS手続義務との関係上、この[方法3]についても、上記[方法2]と同様に、活用例は比較的多くあるようです。


【6】
 ただ、もちろん、日本を含む他の国における情報提供の場合と同様に、上記のような情報提供にもデメリットとして認識すべき下記事項がありますので、留意する必要はあります。
 ・情報提供を行う者がUSPTOでの審査に参加できない(提出する公知文献の審査官による評価について争えない。)
 ・情報提供を行うことにより、出願人が自己の米国出願の重要性に気付き、一生懸命良い権利を取ろうと努力することになる。


弁理士 石原啓策

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