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国際出願に関する法改正情報(意匠法、商標法)

日本において意匠権又は商標権を取得するためには、日本特許庁(JPO)に対して直接出願する方法と、国際事務局に対して日本を指定した国際出願(※)をする方法とがあります。

日本を指定した国際出願を介して日本で登録を受けようとする場合、現行法では、特殊な手続を追加的に行う必要があり、この特殊な手続に慣れていない出願人がその手続を見逃したために本来なら取得できるはずの権利を取得できないといったケースが多く発生しています。

今般、そのような事態の発生を抑えるため、国際出願に関する日本の法律(意匠法、商標法)が改正されましたので、お知らせします。

<※ 国際出願とは>
出願人が、WIPO国際事務局へ1つの出願手続を行うことで、複数の指定国に出願した場合と同等の効果を得ることができる制度です。国際出願は1つの手続で済みますが、登録の可否は各指定国の特許庁によって判断されます。
ここで、意匠の国際出願とは、ハーグ協定のジュネーブ改正協定第1条(vii)に規定する国際出願であって、日本を指定締約国に含むものを対象とすることとします(以下、「日本を指定する国際意匠登録出願」とも記載します。)。また、商標の国際出願とは、マドリッド協定議定書第二条(2)に規定する国際出願であって、日本を領域指定に含むものを対象とすることとします(以下、「日本を指定する国際商標登録出願」とも記載します。)。


1.日本を指定する国際意匠登録出願について、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書の提出機会の追加


日本を指定する国際意匠登録出願において、新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、法律によって定められた期間内に、意匠登録を受ける権利を有するもの(以下、単に「出願人」とも記載します)の行為に起因して意匠が公開されたこと等を証明する証明書を提出する必要があります。その証明書の提出の機会が、今回の法改正により追加されます。
なお、本改正法の施行日は、2021年5月21日(公布日)から6か月以内です。

<新規性喪失の例外>
意匠登録出願より前に公開された意匠は、新規性を失ってしまっているため、原則として意匠登録を受けることはできません。しかし、国によっては、出願人の行為(展覧会での展示、刊行物発行、ウェブサイトへの発表等)により新規性を喪失した場合には、新規性を失わなかったものとして取り扱う規定があります。日本においても同様の規定があります。しかし、日本においては、出願人の行為に起因して新規性を喪失したことを証明する証明書を所定の条件のもと提出しなければ、新規性を失わなかったものとして扱われることはありません。

現行のルール(法改正前):日本を指定する国際意匠登録出願をした出願人は、日本で新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、国際公表の日(国際出願の日から原則6月後)から30日以内に、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書をJPO長官宛てに提出する必要があります。

図1
図1:「特許庁:産業構造審議会第15回知的財産分科会」配布資料中の図に名古屋国際特許(業)にて加筆をしたもの

問題点:国際意匠登録出願の願書は出願時にWIPO国際事務局に提出しますが(上記図1中の(1))、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書は国際公表から30日以内に、日本特許庁(JPO)に提出しなければなりません(上記図1中の(2))。このように願書と証明書との提出時期や提出先が異なります。海外出願人又は海外代理人が、日本の上記ルールを知らない、あるいは知っていても証明書の提出期限を意図せず徒過してしまうケースがありました。その結果として、海外出願人による出願が、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができず、自己の公開行為により拒絶されるといった事態が生じています。

法改正後:法改正前の提出方法(上記図1中の(2))に加えて、海外出願人が、国際出願と同時に、オンライン及び郵送のいずれかの方法により、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書をWIPO国際事務局に提出することが可能となります(下記図2中の(1)‘)。つまり、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書を提出する機会が追加されます。
(改正法施行後は、証明書提出ができる時期については、国際出願と同時というタイミング(図2中の(1)‘)と、国際公表後30日以内(図1中の(2))という2つの時期となります。)

図2
図2:「JPO:産業構造審議会第15回知的財産分科会」配布資料中の図に名古屋国際特許(業)にて加筆をしたもの

現行のルールでは、日本語以外で作成された、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書をJPOに提出する際には、証明書の日本語訳及び送付状の提出を併せて行うことが必要です。法改正後については、国際出願と同時に証明書を提出する場合にも日本語訳の同時提出を要件とするのか、日本語訳の後日提出を認めるのか、JPOにて現在検討中です。

新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書を国際出願と同時に提出するためには、当然ながら、国際出願までに証明書を準備する必要があります。先願主義の下、出願は早期に行う必要がありますが、証明書の準備には時間を要します。また、国際出願時に新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書を提出したとしても、提出した証明書に記載した公開事実の他にも公開事実があった場合には、原則として、この追加事実についても証明書に記載して適切な時期に提出しなければ、日本で適切な意匠登録を受けることはできません。そのため、従来どおりの証明書提出方法、つまり、国際公表から30日以内にJPOに提出する方法は、改正法施行後においても、依然として利用価値の高いものと思われます。

また、国際出願と同時に新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書を提出する場合も同様に、その後のJPOでの審査がスムーズに進むようにするためには、方式的にも実体的にも、日本の審査実務に沿った内容で証明書を作成して提出に用いることが望ましいと言えます。

証明書の方式要件及び実体要件について不明点がありましたら、当法人にご相談下さい。


2.国際商標登録出願における日本の個別手数料の納付方法の変更


現行のルール(法改正前):日本を指定する国際商標登録出願において、日本での登録を受けるためには、出願人は国際商標登録出願時と登録査定時の2回に分けて手数料を納付する必要があります(下記図3参照)。

図3
図3:現行ルール(法改正前)における手数料納付時期(2回)

問題点:JPOのように、手数料を二段階に分けて納付することを要求するのは、現在、日本、ブラジル、キューバの3カ国の特許庁のみです。そのため、二段階納付に慣れていない海外出願人が、2度目の手数料納付手続を見逃し、出願がみなし取下げとなるケースが年間700件程度も生じています。

法改正後:日本を指定する国際商標登録出願についても、手数料を国際出願時に一括納付する方法に変更されます(下記図4参照)。

図4
図4:改正法施行後における手数料納付時期(1回)

なお、本改正法の施行日は2021年5月21日(公布日)から2年以内です。

弁理士:吉元梨江子

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